文化行政

大分県文化振興基本方針

平成16年4月1日施行

第1 策定の背景

 私たちのふるさと大分は、美しく豊かな自然の恵みを受けて、古来から地域の固有の歴史と風土に育まれた数多くの個性的な文化を築き上げてきました。その文化遺産の恩恵を受けた文化環境の中で私たちは日々の生活を営んでいます。
 いま、少子高齢化、過疎化の進行や、情報化や交通網の整備による生活圏の拡大、地方分権を目指す行政圏の拡大、国際化や環境問題への対応など新たな時代の変化によって地域社会が大きな変貌を遂げようとしています。そのなかで、今日まで受け継がれてきた地域の伝統文化や生活文化の保存と継承が求められるとともに、変化に対応した地域社会を支える文化の創造が求められています。
 また、経済の発展による社会の成熟化や人々の高学歴化、情報通信技術などの科学技術の進展に伴い、人々の価値観や生活様式が大きく変化、多様化しています。人々はゆとりや潤いの感じられる快適な暮らしや、いきがい、心のやすらぎを求めるなど生活の質を重視するようになり、それらに寄与する文化芸術(注1)の意義が広く認識され、文化を通じた真の豊かさが求められるようになってきています。こうした人々の要求に応じた文化の振興が社会の課題となっています。
 文化芸術は、人々の感性に訴え、深い感動を与えて、人々を様々な活動に導き、その文化のエネルギーが社会経済に影響を与え、新たな活力をもたらします。県民が主体的に活発な文化活動を行う、活気に満ち、賑わいあふれる「元気な大分県」を創っていく取り組みが必要です。
 そのため、大分県では、文化振興に取り組む県の姿勢と責務を明らかにした「大分県文化振興条例」を制定し、県民一人ひとりが地域で「安心」して心豊かに暮らすことができ、文化を活かした「活力」ある地域を創ることにより、文化を担う人々がいきいきと活動し「発展」する大分県づくりをめざして、文化振興施策を総合的かつ計画的に推進していくことといたしました。

第2 基本方針の位置づけ

 この「文化振興基本方針」は、県の文化振興の基本理念と県の責務を明らかにし文化振興施策の基本となる事項を定めている「大分県文化振興条例」の第7条に基づき、県として「文化振興施策を総合的かつ計画的に推進するために定める」ものです。今後、この方針に沿って文化振興施策の推進に努めていきます。
 なお、第6条に基づき、「文化振興施策の策定と実施に当たっては、県民の自主性及び創造性が発揮されるよう十分配慮しつつ、県民が文化に親しみ、文化を生活にいかし、文化を創造することができるよう、必要な諸条件の整備に努める」とともに、第3条第2項に基づき、「県の行うあらゆる施策に文化的視点を取り入れるよう努める」こととします。したがって、芸術文化、伝統文化などの諸分野にわたる本来的な文化振興の施策のみならず、生活文化を含め、県行政の多様な分野においても本方針に沿った施策を実施するよう努めるものです。
 さらに、第4条第2項に基づき、県が「市町村の文化振興施策について必要な支援及び助成を行う」際の指針ともなるものです。
また、本方針は向こう数年間の施策の基本方針となるものですが、社会経済情勢の変化等に対応して、適宜内容の見直しと変更を行うこととします。

第3 基本理念

 文化振興の推進に当たっては、文化振興条例第2条に掲げられた次の三つの基本理念にのっとり、施策を総合的に策定、実施します。

1 地域文化の創造並びに伝統文化の保存と継承を通じて、活力ある地域社会を形成することにより、文化の香り高いふるさと大分を創造する。
2 文化の担い手が一人ひとりの県民であることを認識し、県民の主体的な参加による自由な発想と文化活動を尊重する。
3 芸術文化、伝統文化、生活文化等は、県民が誇りと独自性を感じることができる県民の共通の財産として尊重され、将来の世代に引き継がれるよう努める。

第4 基本視点(文化振興施策を推進する視点)

 基本理念にのっとり、文化振興施策の実施に当たって常に配慮していくべき基本視点を、「人」を育て活かす、「伝統」を生かす、「本物」の文化にふれる、という三つのキーワードによって集約、表現し様々な施策展開を図っていきます。

1「人」を育て活かす

 文化は主として人間の精神活動の所産であり、文化にかかる全ての営みにおいて「人」が基本となります。豊かな文化を生み出し育てるのも「人」であり、これを享受するのも「人」です。「文化の担い手は県民一人ひとり」であり、文化を理解し、文化活動に主体的に参加し、文化を生活の隅々まで活かすことのできる「人」を創り育てていくことが必要です。文化に対する関心が高まる一方で、伝統芸能、芸術分野などでは後継者不足や指導者不足が表面化してきており、若手芸術家や継承者の養成などの人材育成に努めていきます。次代の社会・文化を担う子どもたちについて、その感性を磨き、豊かな人間性と創造性を育むためには、学校教育や地域活動を通じ、子どもが文化に親しみ参加する機会をつくり、子どもたちが心豊かな人間として成長するためのバックボーンを形成することが大切です。特に、教育現場においては文化芸術を通した子どもたちの情操教育に取り組むことが必要です。
 また、地域振興や企業活動には、文化的センスをもったリーダーが必要とされており、地域文化に根ざしたおもてなしの心をもった人たちの存在と積極的な活動が観光振興につながります。県民一人ひとりがそれぞれの地域や文化を愛し、文化活動を自主的に展開するための施策を推進します。

2「伝統」を生かす

 文化は、先人が地域の自然や風土の中で形づくってきた、かけがえのない貴重な遺産です。これらは地域に住む者のアイデンティティ(注2)を形成し、郷土への愛着と誇りを育むものです。大分県には数多くの豊かな文化遺産があり、これらは「県民共通の財産」として尊重されるべきものです。大分県は、海岸部から平野部、高原、盆地など複雑な地形に応じた、温暖な地域から高冷地まで変化に富んだ気候をもつとともに、豊かで美しい海と緑の山々、豊富な温泉や湧水など多様な自然に恵まれ、個性豊かな風土を形成しています。また、約300年にわたった小藩分立の歴史によって、それぞれの地域で独自の気風が育っています。このことが県内の各地域に多様性に富んだ独特の文化財や伝統芸能などの伝統文化が存在する背景となっています。また、大分県は古来、宇佐八幡文化、六郷満山の仏教文化が華ひらき、キリシタン文化の導入、さらには三浦梅園、帆足万里、広瀬淡窓、田能村竹田、前野良沢、福沢諭吉などの江戸期や明治の文明開化に活躍した先人にみられるように、異文化を積極的に摂取・融合し、固有の文化を創造する進取の精神に富んでいるといわれています。
 しかし、市町村合併が進展する中、新しい市・町における文化行政の充実が期待される一方、周辺地域が保持・継承してきた固有の文化の衰退も懸念されます。自然と歴史に根ざし、人々によって伝えられた多彩な文化を尊重し、保存・継承するとともに、伝統を生かした新たな文化の創造や地域づくり、観光振興、産業振興を推進する必要があります。また、地域の伝統を再認識することは、コミュニティの再生にもつながっていきます。

3「本物」の文化にふれる

 文化は、人々の心を豊かにし、ゆとりと潤い、安らぎといきがいをもたらすものです。文化とは人間の精神活動が創りだした創造的価値の集積といえます。その精華である優れた芸術作品、音楽、演劇、舞踏等の芸術を鑑賞し、あるいは鍛え上げられた技術によるハイレベルのスポーツ競技などを観戦することは、人々に感動と喜び、夢と希望をもたらします。そして、人々の感性を磨き、自分の個性を発見し、それぞれに合った文化活動に主体的に参加し、実践する動機付けともなります。そうした一人ひとりの文化活動が、「文化の香り高いふるさと大分の創造」につながります。そのため海外の優れた芸術をはじめ、県民に様々な分野の優れた文化芸術の鑑賞機会を提供することが重要となります。それには、県民ができるだけ身近な場所で、しかも比較的容易に文化芸術の鑑賞ができるように配慮することも必要です。そのための様々な文化情報の提供にも努めます。また、企業の協賛やNPO・ボランティアの協力など民間活力を活かし、文化団体や市町村とも連携を取りながら、良好な文化環境の整備に努めます。

第5 文化振興の基本的施策

 文化振興条例の三つの基本理念に基づき、文化振興施策の体系を「1 文化の香り高いふるさと大分の創造」によりまちづくりや環境づくりの施策を、「2 一人ひとりの県民が文化の担い手」により県民の主体的な文化活動の施策を、「3 文化は県民共通の財産」により文化の継承・発展の施策としてそれぞれ、次の基本的施策にまとめ、総合的かつ計画的に実施していきます。

1 文化の香り高いふるさと大分の創造


(1)地域文化を活用した文化の香りあふれるまちづくり

 地域の独自性に富む大分の伝統文化は、貴重な遺産として連綿と受け継がれてきました。今、市町村合併の進展により、歴史・伝統の結びつきの強い地域が一つにまとまり、より広域的に一体的な行政を推進していくこととなり、伝統文化や生活文化など他の地域にはない貴重な価値を再認識・再評価して、オリジナリティあふれる地域文化として新たな活用を図って地域の持つ潜在能力を引き出し、より豊かな活力あふれる地域を創造していくことが望まれます。
 また、大分県の豊かな自然や棚田や里山などの文化的景観、古い街並みなど良好で美しい環境は、地域への愛着や誇りを高め、地域を魅力あるものにするものであり、自然と文化が共生する環境づくりが求められます。
 地域の特産物や歴史風土に根ざした伝統産業は、地域の人々の生活を支え豊かさと活力をもたらす源であり、さらなる振興を図る必要があります。その地域にしかない文化資源を生かして地域の新しい価値や魅力を引き出し活用を図れば、特色ある地域産業の創出が期待できます。特に、地域外の人々との交流等によって地域の活力を生む観光の振興は、地域経済にもたらす波及効果も大きいことから、積極的に推進することが求められています。

(1)地域の個性を活かしたまちづくり
 各地域の特色ある伝統文化、生活文化や芸術文化を活かした文化の香りあふれるまちづくりを推進します。

(2)自然環境との共生、景観づくりの推進
 県民一人ひとりの環境に対する意識を高めるとともに、地域における環境美化運動を推進するなど、自然を守り育て、活用し、豊かな自然と文化が共生する環境づくりを推進します。

(3)文化資源を活かした観光と地域産業の振興
 伝統的な技術や技法を活かした工芸などの資源を活かした産業を振興するとともに、地域の歴史、文化財などの文化遺産、伝統芸能などの伝統文化、食文化などの生活文化を活用した観光を振興します。

(2)県民の文化活動の場づくり

 文化活動は、県民一人ひとりが主体的に自己を表現し、人々と交流し、心を豊かにする活動です。県民の主体的な文化活動を推進するためには、日常の練習やその成果の発表の場づくりが必要となります。
 また、県民が文化芸術に親しむことができるように、文化イベントの開催情報など文化に関する多様な情報を収集・整理し、広く提供することが大切です。
 さらに、県民がいろいろなスポーツに親しみ楽しむことは、健康で活力に満ちた生活や人々との連帯感の醸成に大きな役割を果たします。そのため、県民が各人に合ったスポーツ、レクレーションなどを楽しみ交流するとともに、気軽に、体力づくりや健康づくりを図ることができる環境をつくることが必要です。

(1)文化活動への参加機会と発表の場の充実
 県民誰もが文化活動に参加する機会の充実や制作作品、練習成果の発表の場の充実を図ります。特に、芸術家や芸術団体の優れた芸術の創造活動を促進するため、その成果発表の場を充実させるとともに活動を支援します。
また、県民が優れた芸術家の指導を受け、親しく交流するなど、文化創造活動に積極的に参加できるような機会を充実させます。

(2)文化情報の提供と発信
 文化イベント、文化団体、指導者、文化ボランティア、各種助成制度などの情報を収集・整理し、インターネットのほか各種メディアを活用したきめ細かな文化情報の提供を行うとともに、大分県固有の地域文化情報や国際的な音楽、美術、スポーツイベント等の文化情報を広く国内外に発信します。

(3)スポーツ活動の推進
 洗練された技能による高度なスポーツ競技の観戦機会の提供を図るとともに、県民に広くスポーツ活動を推奨し、スポーツを通じた地域文化を活性化します。

(3)行政の文化環境づくり

 文化の範囲は、芸術文化や伝統文化といった狭義のものにとどまらず、生活文化などを含む行政の全般に及ぶものとなっています。そのため、行政全般の各分野において、施策の企画・実施を行う場合には、地域性、伝統性、人間性、美観性などの文化性を導入して、より質の高い行政の実現を目指していく必要があります。
 また、行政は最大のサービス産業といわれるように、行政事務の多くの部分は県民へのサービスが主体です。県の各部門の行政サービスに、やさしさ、思いやり、ゆとり、潤い、安らぎなどといった文化的な視点を取り入れて、県民に親切で分かりやすく満足される行政サービスを行うことが求められます。

(1)文化活動への参加機会と発表の場の充実
 県民誰もが文化活動に参加する機会の充実や制作作品、練習成果の発表の場の充実を図ります。特に、芸術家や芸術団体の優れた芸術の創造活動を促進するため、その成果発表の場を充実させるとともに活動を支援します。
 また、県民が優れた芸術家の指導を受け、親しく交流するなど、文化創造活動に積極的に参加できるような機会を充実させます。

(1)公共施設等への文化性の導入
 文化施設に限らず公共施設の整備には、地域性、伝統性、人間性、美観性などの文化性を導入し、建物の外観等が、周囲の自然環境や地域の歴史、伝統等との調和がとれたものとなるよう、形状、色彩、デザイン等について配慮するよう努めます。

(2)行政サービスにおける文化的視点の導入
 県民に、わかりやすい文章や言葉の使用、丁寧で親切な対応、親しみやすい説明などに努めるとともに行政サービスに対する職員の意識改革に努めます。

2 一人ひとりの県民が文化の担い手


(1)文化活動を支える人づくり

 文化活動を地域に根づかせ、多彩に展開するためには、それを主体的に担っていく人材と団体の存在が不可欠です。優れた地域の文化を受け継ぎ、発展させ、さらに創造していくための多彩な人材の育成と活用が求められています。
 地域で芸術文化、伝統文化、生活文化を受け継ぎ担って活動している県民、特に音楽・美術・文芸等の指導者、伝統芸能などの継承者、文化財等の保存に尽力する人々、文化事業の企画プロデューサー等が、活発に創造的な活動ができるように環境を整える必要があります。

(1)文化活動指導者等の人材育成
 芸術文化、伝統文化、生活文化の分野を問わず、その文化の中心となって活躍している人々の中から、県民や子どもたちを指導していく人材を確保し、育成します。

(2)文化ボランティア活動の推進
 県民の自発性に基づく地域文化を支えるボランティアやNPOの活動が活発に行われることによって、地域の文化がより輝くものとなるために、地域で積極的に音楽会や美術展などを企画運営する文化ボランティアの育成を図るとともに、イベント時にスタッフとして参加、協力するボランティア活動を促進します。

(3)文化振興のための顕彰の推進
 芸術文化や文化財保護等の分野で幅広く活躍して、顕著な成果を収め、県民文化に大きく貢献をしている人材や団体に対して広く顕彰を行います。

(2)優れた文化芸術の鑑賞の機会づくり

 人間の精神活動の成果である優れた芸術文化・伝統文化等を、身近に鑑賞する機会をもつことは、人々に深い感動と喜びを与えるとともに、人間の感性を育て人々の生活に潤いと安らぎ、ゆとりをもたらし、新たな文化創造の源ともなるものです。
 特に、公立文化施設での芸術文化・伝統文化等の鑑賞機会の提供は大きな役割をもっています。県内には充実した機能と規模を備えた公立の文化ホール、美術館、博物館、図書館などの公立文化施設や社会教育施設があります。これらは、地域の文化の中核施設として、自主企画事業や、啓発事業、文化情報の発信などの充実した機能を果たすことが期待されています。また、地域住民が文化活動を行い、語り合える場として、使いやすい県民中心の施設として管理運営することも求められています。

(1)文化芸術の鑑賞機会の充実
 県民へ優れた芸術文化・伝統文化等に接する機会を提供するため、民間とも連携協力しながら、公立文化施設等における音楽、演劇等の文化事業の充実を図るとともに、県民が国内外の優れた美術等を鑑賞できるよう美術展、彫刻展等の開催を支援します。
 また、子どもや障害者、高齢者など、芸術文化に接する機会が少ない人々が、地域において芸術文化に接する機会を提供するため、公立文化施設等のアウトリーチプログラム(注3)の充実を図ります。

(2)公立文化施設でのソフト重視の運営
 県民の文化活動の中心となる公立文化施設や社会教育施設については、スタッフの専門性と企画運営力など資質の向上を図るとともに、文化情報の提供発信を積極的に行いながら、地域における文化振興の中核施設として県民の利用しやすい管理運営を促進します。

(3)文化活動の交流・基盤づくり

 地域や団体の文化活動の活性化を図るためには、他の地域や団体の文化活動との情報交換・交流を行う中で、互いに学びながら協力し、後継者不足、活動資金不足など活動にあたっての課題を解決していくことが必要です。そのため団体相互と関係機関を繋ぐ交流を促進するとともに、確固とした基盤をつくり団体の活動を活発にすることが必要です。
 また、地域で生まれた固有の文化は、独自であればあるほど、世界にも通用する文化として誇れるものであり、広く世界に紹介していく必要があります。海外の異なった文化を鑑賞し、体験することは、自らの文化を再発見する契機となるとともに、相互理解と交流の促進に役立つものであるため、文化による国際交流を活発にすることが必要です。
 さらに、企業は、地域社会の重要な構成員として、様々な地域文化振興への貢献が期待されています。企業にとって地域文化を支援し、企業内の文化活動を活発化することは、企業内の文化性を高め、行き届いたサービスに反映されることにもなります。企業メセナ活動(注4)は、地域の文化芸術を振興するとともに企業のイメージアップと発展をもたらす重要な活動です。

(1)文化団体をつなぐ交流・基盤づくり
 文化芸術団体、NPO、文化ボランティア、文化施設、社会教育施設等関係機関のネットワークの構築を図り、相互の連携と協働を推進します。また、市町村合併の進展に伴い、広域的な視点に立った地域間での交流連携などを進めます。また、文化団体の活動の基盤を強化するための支援を行います。

(2)文化による国際交流の推進
 国際的な文化イベントの開催や留学生の地域活動の推進、スポーツ国際交流など、アジアをはじめ世界各国との文化及びスポーツ交流を推進します。
 地域や団体の文化活動に対して、経済的支援をはじめ、人的・物的支援も含めた積極的な取り組みが展開されるよう企業に協力を求めます。

3 文化は県民共通の財産


(1)次代の文化の担い手づくり

 将来の文化の担い手となる若者や子どもの育成のためには、幼い頃から文化に親しむ環境づくりが大切です。そのため、若者や子どもが優れた文化を鑑賞し、地域において文化活動を行う機会の充実が求められています。
 また、若手芸術家等の育成により、芸術文化の底辺の拡大を図り文化に活力を与えることが必要です。
学校教育の場においても、文化を尊重する心を育て、豊かな人間性を涵養し、個性を伸ばすため、子どもが優れた文化芸術に直接触れ、楽しみ、創造する体験を持つことが大切です。

(1)若者や子どものための文化活動の推進
 将来の文化を担う若者や子どもの感性を育て、文化を尊重する心と豊かな人間性を育むため、地域における若者や子どもの多種多様な文化芸術の体験機会の充実と自主的な文化活動を促進します。

(2)若手芸術家等の育成
 音楽、美術、演劇等の芸術文化の発展の基盤となる、豊かな才能を持った若手芸術家の支援や発表の機会の充実等を図り、若手芸術家の育成と芸術創造を担う人づくりを推進します。

(2)伝統文化等の発表の場と保存継承の仕組みづくり

 大分県では、古代から様々な文化が花開くとともに、受け継がれてきました。また、生活の中で育まれてきた伝統芸能や伝統行事、さらには伝統工芸、郷土料理なども数多く残されています。これらは大分県の誇るべき伝統文化であり、その意義を理解した上で保存し、後世に継承していかなければなりません。また、現代的観点から、新しい要素・視点及び手法を加え活用することも必要です。
 現在、県内には、国宝をはじめとする数多くの有形・無形の文化財があります。これらは先人の残したかけがえのない貴重な文化遺産であり、これらの文化財を愛し、守る心を育て、保存と活用をすることが大切です。
特に、若い世代に伝統文化を継承するため、若者や子どもが伝統文化を鑑賞し、体験し、さらに自ら発表する場づくりが必要です。

(1)伝統文化の保存継承の推進
 地域で大切に守り育てられた地域固有の伝統芸能や伝統行事等の伝統文化及び地域の風土に育まれた伝統的生活様式や生活文化等の保存継承・記録と発展のための支援を行います。

(2)文化財の保存と活用
 建造物や史跡等の貴重な文化財の保存に努めるとともに、新たに発掘された埋蔵文化財の展示の充実など文化財の活用を積極的に推進します。また、次代の文化財保護の担い手である子どもたちが、学校や地域において継続的に文化財を学習、体験できる機会と場の充実を図るとともに、文化財愛護少年団等の育成強化を図ります。

(3)若者や子どもの伝統文化の発表の場づくり
 若者や子どもが、地域で伝統文化を継承するため、鑑賞、体験、発表できるような環境づくりの充実を図ります。

第6 推進体制の充実


1 県民・文化団体等・行政の連携強化の充実

 文化振興県民会議を中心として、文化の担い手である県民、文化団体等と行政とが連携を強化して文化振興の総合的な推進を図ります。
 文化活動を行う県民と民間団体、企業等が、その特徴を活かしながら役割を分担し、連携・協働できるような環境づくりを推進します。

2 国・県・市町村の協力連携の充実

 施策を推進する行政間が互いに連携協力し、協働・分担を図りながら文化振興が効果的に実施されるために、「文化芸術振興基本法」等に基づいて文化振興策を実施する国と、「文化振興条例」に基づいて広域的な視点で施策を展開する県、及び住民に身近な取り組みを行う市町村とが連携をとって文化振興を推進します。
 県においても、庁内の関係部局間の連絡調整の強化を図り、施策の総合的な進行管理を行います。

注1)文化芸術
 大分県文化振興基本方針では、大分県文化振興条例に規定する「芸術文化」「伝統文化」「生活文化等」を総称して「文化芸術」と以下で記述します。

注2)アイデンティティ
 人格における存在証明または同一性。ある人の一貫性が時間的・空間的に成り立ち、それが他者や共同体からも認められていること。自己の存在証明。自己同一性。(広辞苑による)

注3)アウトリーチプログラム
 子どもや障害者、高齢者など、芸術文化に接する機会が少ない人に対して芸術文化に接する機会を提供するため、中核となる文化施設でのコンサート等を行った演奏家等が、地域でミニコンサートや交流会、指導などを行う活動。

注4)企業メセナ活動
 「メセナ(mecenat)」という言葉は、古代ローマ時代に詩人や芸術家を庇護した実在の人物マエケナス(Maecenas)に由来する、芸術文化支援を意味するフランス語。企業メセナとは、「企業が社会貢献の一環として行う芸術文化支援」という意味であるが、教育や環境、福祉なども含めた「企業の行う社会貢献活動」と広義の解釈で使用されるようになっている。
 企業メセナ活動の活性化を目的に設立された全国的な組織として「公益社団法人 全国メセナ協議会」がある。