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【おおいた芸術文化の旅 OITA Art&Culture】別府・国東エリアで音楽と現代アート、仏教美術を巡る

別府・国東エリアで音楽と現代アート、
仏教美術を巡る

別府・国東エリアで音楽と現代アート、 仏教美術を巡る

別府・国東エリアで音楽と現代アート、 仏教美術を巡る

別府・国東エリアで音楽と現代アート、 仏教美術を巡る

別府・国東エリアで音楽と現代アート、 仏教美術を巡る

別府・国東エリアで音楽と現代アート、 仏教美術を巡る

別府・国東エリアで音楽と現代アート、 仏教美術を巡る

別府・国東エリアで音楽と現代アート、 仏教美術を巡る

別府・国東エリアで音楽と現代アート、 仏教美術を巡る

別府・国東エリアで音楽と現代アート、 仏教美術を巡る

別府・国東エリアで音楽と現代アート、 仏教美術を巡る

温泉の源泉数・湧出量ともに日本一を誇る別府市では、世界最高峰のピアニスト、マルタ・アルゲリッチ氏を総監督に迎える「別府アルゲリッチ音楽祭」のほか、世界の著名なアーティストも作品を披露するアートイベント「in BEPPU」「ベップ・アート・マンス」が毎年開催されています。
別府市に隣接する国東半島では古来、日本遺産にも認定された仏教文化が花開き、多くの史跡や文化財がその繁栄を今に伝えているほか、2014年に開催された「国東半島芸術祭」を契機に現代アート作品も多数設置されています。
音楽と現代アート、仏教美術を巡る旅に出かけませんか。

インタビュー

世界の頂点に立つアルゲリッチが大分と奇跡の邂逅 ここでしか出会えないクラシック音楽体験を求めて © Rikimaru Hotta

伊藤 京子氏 プロフィール

伊藤 京子氏

ピアニスト/公益財団法人 アルゲリッチ芸術振興財団 副理事長 別府アルゲリッチ音楽祭 総合プロデューサー しいきアルゲリッチハウス プロデューサー 福岡県出身。東京芸術大学附属高等学校から東京芸術大学、フランクフルト音楽大学卒業。

世界の頂点に立つアルゲリッチが大分と奇跡の邂逅
ここでしか出会えないクラシック音楽体験を求めて

大分県の芸術文化事業として1998年にスタートした「別府アルゲリッチ音楽祭」。世界的に有名な天才ピアニスト、マルタ・アルゲリッチ氏を総監督に迎え、国内外の演奏家を招いてコンサートや教育プログラムを開催している。同音楽祭を主催する「公益財団法人アルゲリッチ芸術振興財団」の副理事長であり、音楽祭の総合プロデューサーも務めるピアニストの伊藤京子さんに、大分で活動を続ける意義と芸術が社会に対して果たす役割について話を聞いた。

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ステージ上で観客の拍手に応えるマルタ・アルゲリッチ氏(写真左)と伊藤京子さん(右)。 ステージ上で観客の拍手に応えるマルタ・アルゲリッチ氏(写真左)と伊藤京子さん(右)。© Rikimaru Hotta

伊藤さんからみた大分の魅力とは?

「別府アルゲリッチ音楽祭」を企画するにあたり、本当の大分の魅力とは何かについて、深く考える必要がありました。そこで明らかになったのは、キリシタン大名として知られる大友宗麟が力を発揮していた頃、音楽を含めて西洋の文化を受容したという歴史が、大分にはあったということです。この歴史こそが私たちの、「奇跡」とも言えるアルゲリッチとの出会いを呼び込んだのだと思っています。しかし、多くの人々がそうした歴史の偉大さに気づいていなかったように思います。他の地域にはない、金銭では決して得ることのできない歴史を紡いだ大分の先人たちには、尊敬の念を抱いています。
歴史は土地の気質を生み、そこに住む人々の人格をつくります。よって、私たちが今住んでいる「この場所」がどのような文化を持つかを知れば、過去に日本人が持っていた内省的な思考力や繊細な感性を覚醒させることができるはずです。

第21回「別府アルゲリッチ音楽祭」のメイン公演「ベスト・オブ・ベストシリーズVol.7 オーケストラ・コンサート」(2019年5月18日、iichiko総合文化センター・iichikoグランシアタ)の様子。マルタ・アルゲリッチ(ピアノ・写真右)、巨匠ミッシャ・マイスキー(チェロ・左)、世界的指揮者シャルル・デュトワという豪華な顔ぶれがそろった。 第21回「別府アルゲリッチ音楽祭」のメイン公演「ベスト・オブ・ベストシリーズVol.7 オーケストラ・コンサート」(2019年5月18日、iichiko総合文化センター・iichikoグランシアタ)の様子。マルタ・アルゲリッチ(ピアノ・写真右)、巨匠ミッシャ・マイスキー(チェロ・左)、世界的指揮者シャルル・デュトワという豪華な顔ぶれがそろった。
© Rikimaru Hotta

現在、大分で芸術文化活動を営むなかで感じることは?

国内有数の温泉街として栄えた大分はいま、自然の恵みと共に人が創る芸術による新たな社会の構築へ舵をきろうとしているのだと思います。クリエイティブなエネルギーを注ぎ、そこから生まれるものによって、遊興的な街から人的遺産へと移り変わるべき時期に、私たちは直面していると言えるでしょう。
芸術の本質は、その精神性にあります。音楽はいつも人に寄り添い、また人とともにありながら人間の深いところにあるもの、善き魂と言えば良いのでしょうか、そうした大切な心を、呼び覚ましてくれます。だからこそ偉大な先人が繋いできた芸術は、人類の遺産として未来へ手渡すことが必要でもあり、こどもたちの心の育みにもきっと役立つと思っています。それが社会を作る土台となる、大切な「人」を育てることにも繋がっていくのです。そして大分は今、そうした新たなイメージを求めている時期なのだと感じています。

2016年に開催された第18回別府アルゲリッチ音楽祭で演奏するアルゲリッチ氏と伊藤さん。 2016年に開催された第18回別府アルゲリッチ音楽祭で演奏するアルゲリッチ氏と伊藤さん。© Rikimaru Hotta

「別府アルゲリッチ音楽祭」が地域または社会において担う役割とは?

音楽は、私たちの心の成長を助け、想像力を育み、知的な刺激を与えてくれます。あるいは、普遍的で非言語的なコミュニケーションツールとして人に寄り添い、生きる道を示してくれます。からだと心を使って生みだすものにこそ、人々は共感し、感動します。そうした人間的な営みがこれからの社会には必要だと信じて、これまで「別府アルゲリッチ音楽祭」を続けてきました。
みんなが幸せだといいのに――。ある時、アルゲリッチはため息をもらすようにこうつぶやきました。あふれるような情熱の奥にやさしさを持っている、彼女らしい言葉です。私はこの彼女の言葉に、深く共鳴しました。
この分断された世界において私たちが必要なのは、他者を受け入れて互いを認めあう「寛容」の精神です。本来持っていた人間らしい本能や感覚を、心の耳で「聴く」ことによって取り戻すことができれば、私たちはより豊かに暮らすことができます。また、大分だからこそ、現代の自己中心的な思想によって分断された社会に他者を受け入れ、人が繋がっていくことの素晴らしさを伝えることができると信じています。大分で私たちが奏でる音楽が、その一助として社会のなかに存在できればこれほど幸せなことはありません。

構成・取材・文=安永真由(チカラ)

別府アルゲリッチ音楽祭

※正式名称:「MUSIC FESTIVAL Argerich's Meeting Point(R) in Beppu」〜アルゲリッチの出会いの場〜
大分県別府市で1998年より毎年開催されている音楽祭。世界的ピアニスト、マルタ・アルゲリッチが総監督を、伊藤京子氏が総合プロデューサーを務める。「音楽が社会にできること」をテーマに掲げ、アルゲリッチの深い思いに共感した人々が大分に出会いの場を求めて集う “Argerich's Meeting Point”は、より良い社会を創るために音楽での感動体験を提供している。

伊藤京子氏 プロフィール

伊藤京子氏 プロフィール

伊藤京子・いとうきょうこ ピアニスト/公益財団法人 アルゲリッチ芸術振興財団 副理事長 別府アルゲリッチ音楽祭 総合プロデューサー しいきアルゲリッチハウス プロデューサー
福岡県出身。東京芸術大学附属高等学校から東京芸術大学、フランクフルト音楽大学卒業。
10年間の渡航中、ブゾーニ国際ピアノコンクール3位入賞。その後演奏家としてのキャリアを積み、シノポーリ、サバリッシュとの共演をはじめ、1994年、長年親交のあるアルゲリッチとアルゲリッチ・チェンバーミュージック・フェスティバルを企画し、日本各地で成功を収める。これを機に別府市からの委嘱を受け、企画プロデューサーとしてアルゲリッチと共に新しい音楽文化の創造を具現化した。2018年11月、別府アルゲリッチ音楽祭を育て、日本の地方と世界の音楽界を結びつけた功績で西日本文化賞を受賞。その他に新日鉄音楽賞(2002年)、JASRAC音楽賞を受賞(2016年)。

※公式サイトより一部抜粋(https://www.argerich-mf.jp/ito.shtml

アートで地域を活性化する「BEPPU PROJECT」がいま大分・別府~国東半島で活動を続ける理由

山出 淳也氏 プロフィール

山出 淳也 氏

NPO法人「BEPPU PROJECT」代表理事/アーティスト 1970年大分生まれ。2016年より「in BEPPU」総合プロデューサー、「国民文化祭おおいた2018」市町村事業アドバイザー。「文化庁文化審議会」文化政策部会委員、平成20年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞(芸術振興部門)。

アートで地域を活性化する「BEPPU PROJECT」が
いま大分・別府~国東半島で活動を続ける理由

2009年に開催された別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」を皮切りに、大分県ではさまざまなアートプロジェクトが進行している。現代アートの芸術家によって国東半島の魅力を再発見する「国東半島芸術祭」(2014年)や大分市街地を舞台にした「おおいたトイレンナーレ」(2015年)、国際的に活躍するアーティスト1組を招聘し、地域性を生かしたアートプロジェクトを実現する個展形式の芸術祭「in BEPPU」(2016年~)など、その活動領域はもはや海をも越える。これらのプロジェクトを企画・運営するのがNPO法人「BEPPU PROJECT」だ。同団体の代表理事を務め、アーティストとしての活動のキャリアを持つ山出淳也さんに、大分で活動を続ける意義と芸術が社会に対して果たす役割について話を聞いた。

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森を神聖な教会に見立てた“説教壇”= La Chaire / 川俣正(国東半島芸術祭の作品) 森を神聖な教会に見立てた“説教壇”= La Chaire / 川俣正(国東半島芸術祭の作品)

「BEPPU PROJECT」の発足から15年を迎えます。どのような考えのもとこうした多様な活動を継続してきたのでしょうか?

2009年に実施した「混浴温泉世界」はひとつの節目となりました。我々の目的は、地域に何が必要かを考え、地域と私たちのビジョンを一致させること。そのためにアートをいかに「経営」すればいいのかを考え抜いてきました。具体的に言えば、事業ポートフォリオの見直しや利益を生む仕組みづくりなどですが、これらの視点は必ず地域のニーズに根ざすように意識しています。
活動を定着させ、継続させていくにはチャンス、理解、タイミングの3つが必要です。私たちはアートプロジェクトそのものをR&D(※1)とプロトタイピング(※2)の繰り返しだと考え、14年間それを積み重ねてきたわけです。

※1【R&D】研究・開発。
※2【プロトタイピング】改良を見込んで、大筋として最初につくるプロジェクトや仕事の仕組み(プロトタイプ)を実行すること。

別府現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』の後継企画として2016年より始動したアートプロジェクト「in BEPPU」。写真は「べップ・アート・マンス 2017」期間中に開催された「西野 達 in 別府」の様子。 別府現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』の後継企画として2016年より始動したアートプロジェクト「in BEPPU」。写真は「べップ・アート・マンス 2017」期間中に開催された「西野 達 in 別府」の様子。

撮影:田崎 真亜人 ©混浴温泉世界実行委員会

山出さんからみた、大分の魅力とは?

山があり、川があり、湧水がある。地域文化がまだ生活の中に息づいていて、言葉と産業、農業などの特徴を探ることで、交流やつながりが見えてくる点が、大分の魅力だと思います。歴史的には、海から多様な異文化を受け入れてきた土地でもあります。そうした風土を見直して、地域の可能性を見出す機会が今、必要とされていると感じます。
大分でのアートプロジェクトを取り巻く環境という視点から言えば、官民が同じ目的を持って協働しているという点で、非常に恵まれていると思います。価値のすりあわせやビジョンのチューニングがしやすく、互いに得意な分野で事業を進められる。例えるなら、大分県自体がひとつの株式会社のようなイメージです。

香々地地区に展示されたオノ・ヨーコ《見えないベンチ》。2013年2月9日~3月17日にかけて、国東市と豊後高田市を中心に開催された「国東半島アートプロジェクト」で発表された作品のひとつ。現在も鑑賞することができる。 香々地地区に展示されたオノ・ヨーコ《見えないベンチ》。2013年2月9日~3月17日にかけて、国東市と豊後高田市を中心に開催された「国東半島アートプロジェクト」で発表された作品のひとつ。現在も鑑賞することができる。
撮影:久保貴史 ©国東半島芸術祭実行委員会

「BEPPU PROJECT」が地域または社会において担う役割とは?

活動を続けるなかで、我々は何度も同じ課題に直面します。それは「アートは生活に必要か?」という問いです。「無駄」だと捉える人もいるかもしれません。しかし、世の中には必要なものであることには違いない。「答え」はないが、人間の視野を広げ、感受性を刺激してくれる。人が人らしく生きていくために、アートは欠かせないものだと信じています。
社会の中でアートが必要とされ続けるためには「オープンであること」が重要だと考えています。どうしたら地域の人々がより良く暮らせるのか。幸せになるのか。価値とは何なのかを、フィルターの目をもっと細かくしてきちんと「見る」必要があります。
自分の住む地域の文化を知り、誇りを持つことが人を呼び込むことにもつながります。カルチャーツーリズムの視点から考えれば、国東などの地域の文化を拠点にして、県内の地域を結ぶといった「横のつながり」が見えてくる。住民とアーティストの気持ちに寄り添いながら、地域に新しい風を吹き込むのが私たちのミッションだと捉えています。
アートプロジェクトを通して、人と人、地域と企業、過去と現在……とあらゆる要素のハブとなる存在が、地域に求められています。そうしたなかで、未来に向かう見解を提示するような作品がこの大分から生まれてくると、大分はもっとおもしろくなるでしょうね。

構成・取材・文=安永真由(チカラ)

BEPPU PROJECT
(ベップ プロジェクト)

大分県別府市を活動拠点とするアートNPO。2005年4月の発足以来、現代芸術の紹介や普及、フェスティバルの開催や地域性を活かした企画の立案、人材育成、地域情報の発信や商品開発、ハード整備など、さまざまな事業を通じてアートが持つ可能性の普遍化を目指し、アートを活用した魅力ある地域づくりに取り組んでいる。

山出 淳也氏 プロフィールphoto:Takashi Mochizuki

山出 淳也氏 プロフィール

山出淳也・やまいでじゅんや NPO法人「BEPPU PROJECT」代表理事/アーティスト
1970年大分生まれ。2000年~2001年にかけてPS1インターナショナルスタジオプログラムに参加。翌年2002年~2004年まで文化庁在外研修員としてパリに滞在し、世界各地の展覧会に多数作品を送り出した。帰国後、2005年に「BEPPU PROJECT」を立ち上げる。別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」 総合プロデューサー(2009年、2012年、2015年)、「国東半島芸術祭」総合ディレクター(2014年)、「おおいたトイレンナーレ」総合ディレクター(2015年)。2016年より「in BEPPU」総合プロデューサー、「国民文化祭おおいた2018」市町村事業アドバイザー。「文化庁文化審議会」文化政策部会委員、平成20年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞(芸術振興部門)。

アクセス

アクセス

大分空港へ

  • 羽田空港 1時間25分
  • 成田空港 1時間35分
  • 伊丹空港 55分
  • 中部国際空港 1時間10分

大分空港

福岡から大分へ

  • 福岡
    2時間 2時間20分

大分駅